草堂寺(ツァオタンスー)は後秦の時代、亀茲国(現在の新疆ウイグル自治区クチャ)の仏僧「鳩摩羅什(くまらじゅう)」が仏典の漢訳に従事したことで有名な仏教寺院です。
西域生まれの三蔵法師「鳩摩羅什」
亀茲国の王族の家に生まれた鳩摩羅什は幼少の頃に母親と出家し、カシミールに留学し、数多くの仏教の原典に触れます。
西暦384年、亀茲国を滅ぼした前秦の呂光に捕らえられ、涼州(現在の甘粛省武威市)に約20年もの間、軟禁状態に置かれます。
鳩摩羅什は呂光の軍師的立場としてこれをよく補佐したものの、呂光には飲酒を強要されるなどひどい目に合いました。
401年、前秦はすでに滅び、鳩摩羅什は後秦の皇帝となった姚興の命により長安に移ります。
ここでも女性を無理やり与えられて還俗させられるなどされますが、以降、409年に亡くなるまでサンスクリット語の仏教原典の漢訳に生涯を捧げ、その後の中国仏教に計り知れない影響を与えました。
後にインドに渡って多くの仏典を持ち帰り、同じく漢訳作業に従事した「玄奘(602-664)」の遺した漢訳仏典は「新約」、鳩摩羅什の遺したものは「旧約」として区別されています。
日本においても、鳩摩羅什の翻訳したひとつである「南無妙法蓮華経」はそのまま日本にも伝わり、日蓮宗などの法華経に多大な影響を与えました。
その翻訳作業の場所がこの草堂寺というわけです。
訪問記
草堂寺は西安の西、県級都市「户县(フーシェン:戸県)」の南にあります。
路線バスを利用する際は大雁塔付近のバス停から発車している「环山旅游1号线」が便利なものの、運行本数が限られています。
こんな路線もありますので参考にしてください。
地下鉄3号線「吉祥村」出口近くから921路に乗車しても行けます。
バスの運賃は車掌に支払うシステムですので、元気よくはっきりと「ツァオタンスー!」と伝えましょう。
香積寺を訪れた時と同様、この日も雨でした。雨の草堂寺。
やせ我慢ではありませんが(正直少しある)、雨のお寺見物もいいものです。
「鳩摩羅什三蔵法師」と書かれた石碑がありました。
「三蔵法師」とは仏典の翻訳に従事し、その功績が認められた僧に対して使われる尊称で、「玄奘」のみが三蔵法師なわけではありません。
鳩摩羅什は言わば玄奘よりも三蔵法師の先輩なのであります。
鳩摩羅什の舎利(遺骨)の納められた塔がこの先にあるようです。
鍵がかかっていて中は見れませんでした。おじさんも開けてくれなそうでした。
玄奘よりも2百年も早く仏典の漢訳がこの場所で行われ、中国仏教の発展に多大な影響を与えることになりました。
そう考えるとすごい所に来たんだな、という実感が生まれてきます。
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