※映画のネタバレがありますのでご注意ください。
悪くはないけど長い。ショーケンがいい
コッポラ、ルーカスってなんじゃそれ
2023年8月、自宅で鑑賞。
1980年、日米合作。監督:黒澤明、主演:仲代達矢。
アメリカ側プロデューサー:フランシス・フォード・コッポラとジョージ・ルーカスだそう。名前見るだけでお腹いっぱい感。
この「影武者」も先日観た「乱」同様、学生時代に観たっきりでした。
当時は仲代達矢の一人三役だと思っていたのですが、信玄の弟信廉役は山崎努だったんですね。山崎努ってけっこう背高いですね。
撮影開始当初、主役の勝新太郎がすぐに降板したというのは有名な話です。
仲代達矢もいいですが、やっぱりクロサワ+勝新を一度観てみたかったですね。
他大名は出てこなくても、、、
映画タイトルにあるように、物語のツボは「死んじゃったボスを盗人の出である影武者が演じる」ところです。
その影武者をじっくり描ききってほしかったです。わかり易さを出すためか、敵方の上杉、徳川、織田の描写も盛り込まれていたのは必要ない感じがしました。
上杉謙信なんて一瞬出てきただけでしたし。いらんかったろう。
織田信長と徳川家康のくだりも冗長で、物語の説明だけのために出ていた感じ。
どうやって信玄を狙撃したかの描写とかいらんだろう。「敵将の笛の音を聞きたい→余裕ぶっこいて敵方の城塞に近づきすぎた→狙撃音」。これだけでよろしかろう。
武田家臣団にスキがありすぎ
武田家臣団のグダグダっぷりがすごいです。
信玄亡き後の武田家を守るために団結している様子は伝わりますが、諏訪湖に信玄の亡骸を沈める様子を織田と徳川の間諜に思いっきり見られてるではないか!武田家の忍びはどうした!
しかも「俺に影武者をやらせてくれ」と懇願する仲代達也を「影武者はもう必要ない!」と突っぱね、いつの間にか昨晩の決定事項が一転している様子。
そのくせ一歩も退かない仲代達矢の熱意にほだされて結局影武者起用。二転三転朝令暮改。
この時点で武田家の命運は定まった感じ。影武者のせいでもショーケン勝頼のせいでもないです。
むろん映画の中では描かれませんが、長篠・設楽原の戦いの後、6年持ちこたえたのは勝頼の意地と才覚だったのではないでしょうか。
この辺りの、明確な必衰への分岐点が「乱」と共通するところだと思います。
音楽がダサい
音楽が「七人の侍」みたいです。現代的なカラー作品といまいちマッチしない感じがしました。
「乱」ではそのような違和感を抱かなかったのは武満徹のお仕事ぶりゆえでしょうか。
ショーケンが素晴らしい
山崎努、大滝秀治や室田日出男もよかったですが、ショーケンの武田勝頼が素晴らしい。
武田家の跡継ぎ(のつもり)の責任感、百戦錬磨の武田家臣団、何より圧倒的な存在である父親信玄と、周囲からのありとあらゆるプレッシャーを受ける中での堂々っぷり。
しかし物語が進むうち、喜怒哀楽のない直情的な振る舞いの中に不安と孤独を見い出すことができます。
映画「影武者」は一方で勝頼の物語なのであります。
勝新はクロサワと衝突して降板しちゃったけど、ショーケンが演じ抜いてくれたのはこの映画を観る人たちへの贈り物に他なりません。
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